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大和は、紫狼を観察してから、再び腰に手をあてて睨みつける。
「お座りができないのか?」
熊が、大和に手を上げようとしたが、じっと見つめるとお座りをした。
「よし!」
大和が、笑顔で熊の足を撫ぜる。
「どうした?何かに驚いたのか。大丈夫か?」
熊が懸命に、大和に訴えていた。
「そうか。巨大化が始まって、ちょっと驚いたのか。大丈夫、小型化してごらん」
大和を守るように、二匹の熊も寄ってきていた。
「雪緒、ノノノウ、手出ししなくても大丈夫だよ。この子は、ちょっと驚いただけだ」
大和が、熊に手を伸ばすと、紫狼が小型化して犬程度の大きさになった。
「よし!で、君は誰だ?」
大和は、紫狼を見つめてから、窓から見ていた翔一を確認した。
「ああ、そうか。熊化したのか」
翔一の横に、俺の姿を見つけて、大和が冷たい視線を投げてくる。
「……五羅の仕業ですよね。翔一は接待客ですよ、何かあったらどうするのですか」
揺らめく空間が、大和の後ろにある。大和が金色の目になると、戦闘モードに入っている。しかし、金色の目の、大和も見惚れるほどに綺麗であった。
「ごめん、大和。花魁が珍しくて、つい手を出してしまった」
翔一も必死に謝る。
「花魁?もしかして、黒須の弟の紫狼か?」
花魁姿は有名らしい。
第二章 幻の華
獣使い、知られていない大和の一面であった。
やっと人の姿に戻った紫狼は、再び花魁の姿になっていた。
鬼同衆の大広間に行くと、大和達が鍋を食べているが、俺を混ぜようとはしない。
「又、大和を怒らせたのですか」
鬼同衆の纐纈(あやめ)が、窓際で刺身をつまみに日本酒を飲んでいた。俺が横に座ると、日本酒を勧めてくれた。
「あれのせいで……」
花魁姿の紫狼は、大広間の真ん中で翔一によりかかり、酌をしている。
「ああ、花魁、男ですよね。黒須の弟。でも美人ですね」
纐纈も知っていたのか。
「でも、花魁姿をしていても、男性には興味がないと有名だったのに、どうしたもので」
三改木(みぞろぎ)も、酒を片手にやってきた。
「やはり、鬼同丸の客人というのが、ミソなのでしょう」
梶佐古(かじさこ)もやってくる。
ここで、ゼンダ家と手を組めれば大きな収穫になる。紫狼は、それを計算していると、梶佐古は推測していた。
「翔一、紫狼、一緒に鍋にするか?」
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