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大和が声をかけると、嬉しそうに翔一が立ち上がる。恨めしそうに紫狼が翔一を見つめる。本当に男性なのか、疑いたくなるような、紫狼の色っぽさであった。
「あ、ごめん。紫狼は猫舌だよね。緑川、刺身を頼む」
大和の注文に、紫狼が仄かに笑う。炎が揺れたような、艶やかな微笑みであった。
「あ、紫狼。俺にはね、花魁で色仕掛けは無理だからね。俺、そそるのは、ミニスカートとかの類だから」
大和が、妙な説明を紫狼にしていた。しかし、紫狼は、大和の説明に何故か納得している。
「でも、綺麗だよね。この雪緒もかなり綺麗だけどさ。色っぽさがね、違うよね。でも、翔一、手を出すのが早すぎ」
「男で驚きましたが、関係ありませんから」
翔一は、大和と紫狼に挟まれて、ご満悦になっていた。
「それに、初めてだとは驚きました」
それは、俺も驚いた。けど、多分嘘だ。初めてで、あんなに喘ぐとは思えない。
「紫狼、この人は鬼同丸が接待している人だからね、何かしたら、どうなるのかは分かっているよね」
さりげなく大和が、紫狼に釘を刺していた。
「しかし、紫狼。どうして、初対面の翔一に身を任せたの?」
響紀が、翔一に酌をしていた。響紀は、穏やかな青年で、言葉にも優しさがある。
でも、よくよく考えてみると、紫狼の方が、響紀よりも年上であった。
「からかって、逃げようと思っていたのですが。兄貴に恥をかかせれば、それでいいから。でも、翔一のボディが機械で、これなら、熊になって踏んでもいいかと思ったら、すごく気が楽になってしまって。やっと、俺の相手を見つけた、みたいな」
それも、恋なのかもしれない。求めていた相手ではあったのだろう。
「まあ、無理強いでないのならば、ひっそりやってね」
大和は、やや呆れている。
「こんな綺麗な子が、いつもいてくれたらいいなと、俺も思いましたよ」
では、翔一のボディガードに紫狼を使ってみるか。大和も考えた事が同じようで、俺を見ていた。俺が頷くと、翔一に持ちかけていた。
「大和と、仕事のアイコンタクトは、ばっちりなのにね……」
それは、鬼同丸の仕事としてに限定される。
纐纈は、俺が大和に執着しているということを、理解していた。
「シェリエの生粋。ゲートキーパー。本当に大和は厄介ですよね。今や、宇宙が欲しがっている存在なのに、本人は理解していない」
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