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バルサンドはレンの視線に気が付いたのか、少し気まずそうに赤い外套の懐から、羊皮紙を取り出すとレンに差し出した。
「今回の事故は我々の責任である。申し訳なかった」
レンは受け取ると、すっと下げられたバルサンドの頭を一瞥すると、渡された羊皮紙を膝の上に乗せた。
「彼女は最期まで、勇敢に戦いました。立派な狩人です」
レンはそう言うと、バルサンドの目を見つめた。
バルサンドは静かに頷く。
「しかし、私は彼女を、ケルーヤを守ることが出来なかった。バディを死なせてしまった自分は狩人として相応しくありません。如何なる処分も受ける覚悟です」
バルサンドはケルーヤの肩にその大きな手を乗せると首を横に振る。
「我々はお前を処分に下すつもりは無い。それどころか謝罪をするのはこちらの方だ」
はっとレンはバルサンドを見上げる。
「本当に、辛い思いをさせてしまった」
いえ、と言い更に小さくなるレンを見て、バルサンドは唇を噛んだ。
そう、“本来なら”起こり得ない事故だったのだ。
ケルーヤも死ぬことは無かった。
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