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その日の任務は郊外の森林において、第10級クラスのウォルファー一体を狩ることだった。
特級から10級まであるクラスの中でも、最低ランクの人狼を屠る事など、レンとケルーヤのバディにとっては造作も無い。
ましてや、一体など。
視界も良く、三日月の美しい夜だった。
柱のように差す青白い月光を縫うようにして、はるか前方を疾駆する目標の男。
その進行方向は、街に向かっていた。
目標を街へ逃がしてしまえば、再びの発見が困難になり、更には被害の拡大が予想される。
「逃がさないわ!!」
ケルーヤは矢筒から素早く一本の矢を抜き取り、膝をつき構える。
「ハァッ!!」
気合いと共に放たれた矢は鋭い軌跡を描き目標の首を掠る。
『うおオォアァアアッ!!!!』
即効性の毒矢を受けて、首を掻きむしり、転倒し地面に転がる目標。
ケルーヤは素早く間を詰め新たに矢を背中から抜き取る。
『人間風情がアァ......』
グルル、と上体を起こすと目標は身を震わせ、姿を変えていく。
(“変身”する......!)
身体は前のめりに曲がり、全身が急激に膨張し、衣を破き、毛むくじゃらの四肢が現れる。
顔は醜く歪み、目は金色に開かれ、ケルーヤを見据えた。
そこにいるのは、紛れも無い“狼”。
醜く顔を歪め、牙を剥き出し、ケルーヤに向かって反撃にかかる。
『クソがぁああぁ!!!!』
脅威の回復力と免疫を持つ目標は、ダメージを受けても毒では死ぬことはないという。
ケルーヤは怯むことなく二本の矢を番えると、素早く放った。
ヒュンッ、と空を切り裂き矢は人狼の両腿に深々と突き刺さる。
しかし、目標の勢いは衰えること無く、鉤爪がケルーヤの首に伸びた。
ドシュッ
噴き出す鮮血、真紅に染まる景色。
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