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「私にも、何が起こったのか分かりませんでした」
バルサンドは跪くと、レンの手に自分の手を重ねた。
「必ず突き止める。彼女の死を無駄にしないためにも」
レンは頷くと、バルサンドは立ち上がった。
「間も無く、総司令部の会議が始まる。無論、この件について諮るつもりだ。──もし、辛いのであるなら辞めても良い」
レンは黙って首を横に振った。
それなら分かった、と言うとバルサンドは踵を返した。
赤い外套が翻り、その下から二振りの短刀が覗く。
長靴のコツコツと言う音が消えるまで、レンは彼が出て行った廊下を見送った。
一つ息を吐くと、膝の上の羊皮紙を開く。
ケルーヤは殉職したこと、それに対しレンは一切の咎めを受けないこと、レンは暫く休養後、新たなバディが組まれること、事故原因を捜査中とのこと。
そして、一番下方に朱色で仰々しい総司令部の印が押されてあった。
(全てが夢ならいいのに......)
レンはくしゃくしゃっと、羊皮紙を握ると、変えようのない現実に啜り泣いた。
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