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客間の襖障子を開けると、てっきり上座に座っていると思っていた客人の背中が目の前にあって驚いた。黒色の烏帽子、紫の袍、臙脂の指貫。人間はこのような格好はしない。同族の佇まいに胸を撫で下ろす。
迎え入れる側が上座とはいささか居心地が悪いものだが、客人がその場所を選び、先に座しているものを、わざわざ立たせて移動させるのも失礼に当たるだろう。
後ろ手に襖を閉じ、燿は回り込むようにして屏風の前に座った。一度、頭を下げ、顔を上げると、そこには見知った顔があった。
「……ろ、老師!! ご無沙汰しております」
意思の強そうな太い眉。目力だって強い。厚めの唇。真っ直ぐに通った鼻筋。
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