神無 ―カンナ―

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 雪片が折り重なっていく。耳がキンと痛くなるような静寂。実際は音はしていないはずなのに、雪片が重なる音が聞こえてくる。ハラリハラリサラサラ。一枚一枚一欠片一欠片、丁寧に重なり、厚みが徐々に増していくのが分かる。  以前は雪なんて降らなかった。この世界が守られていたからだ。雨も嵐もない。いつも爽やかな晴天が続く。気温だって一定だ。そもそも季節なんて概念自体が存在しない。だから、傘もいらなければ、上着だって必要ない。    いつからだろう。耀(あきら)は大きく息を吸って天を仰ぐ。朝、起きるとまず縁側に立つようになったのは。
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