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「どこで誰が聞いてるかも分からんからな」
「つまりはそういう話をしにきたということですか?」
部屋に入った時点で結界を張らなかったのは、結界を張った後で耀が入室し、結界が破れてしまうのを防ぐためだ。東西南北の襖障子にお札を貼った程度の結界は、それほどに脆くて儚い。
「じゃなければ、雪の中、こんな朝早くにお前の屋敷なんか訪ねたりせん」
どのような方法をとっているか分からないが、人間たちは神々の行動ばかりではなく言動まで管理している。小さいとは言え、結界を張ることで、その管理下から一時的にでも外れようという思惑は――効果のほどは不明だが――分からなくはなかった。
「久方ぶりだな。いつぶりだろうか」
「かの大戦の後、一度、二度お会いしたかと思います」
支配下に置かれ、一度だけ神は人間と戦った。力を封じられ、大した武器も持たず、それでもやはり"人間なんかに支配されてたまるか"と言う意地があった。血気盛に攻め込んだにも関わらず、結果は大敗中の大敗だった。
まほろばを人間に支配されてから、約30年後のことだ。
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