神無 ―カンナ―

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 元来、まほろばの住人の絶対数は決まっている。それは減らない限り、新たに住人が増えることがないことを意味する一方で、減った分を補う力がどこからともなく働くこともまた摂理なのだ。  新たな命の誕生の時、普段は決して鳴くことのない神鳥が突如として(いなな)く。言葉には出来ない旋律だ。心が踊るような祝い事を飾るような晴れ晴れとした響き。嘶きは三日三晩続き、神鳥が軒に止まった赤子堂と呼ばれる建物の中に赤子が横たわっている。  神にも男女はあるが、人間と違って交わったりはしない。名前はあるが姓がないのは父も母もいないからだ。  赤子は瞬く間に成長する。その間、大した世話は必要ない。乳を与える必要もなければ、抱きかかえてあやす必要もない。人間より遥かに早い速度で成人となり、以後、年老いたりもしない。
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