神無 ―カンナ―

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 かつて面白がって神の赤子を人間界の竹の中に入れた仲間がいた。成長した赤子にあれやこれやと知恵を与え、言い寄る男たちを手玉にとるだけとって、月の住人だと嘘までつかせ、仰々しくまほろばに連れ戻した。これは後に人間のお伽話にも語られる有名な出来事だ。  もちろん理に触れた行為だ。仲間も、そして赤子だった神さえもまほろばに足を踏み入れた瞬間、抹消されてしまった。  過去にはそんな悲しい出来事もあったが、今となってはそれでさえも懐かしく思う。 「支配されてから、仲間たちがどれだけ居なくなったか知っておるか?」  大戦で失った命ばかりではない。命の限りがなかったはずの神々に突如として寿命が突きつけられた。燿より遥か彼方から生きている神はたくさんいる。結界が破られ、萎むように命の尽きた同胞を燿だってたくさん見てきた。
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