神無 ―カンナ―

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 人間たちはまほろばに多くの街を作った。その中で最大とも言われる人間の住む都市トーキョー。カンナの技術を持つとされる日本と言う国の人間が先導して築いた都だ。  健老師が屋敷を訪れてから約1年。身支度を整え、人間の生活に関する情報を頭に叩き込んだ。服装だってそうだ。烏帽子なんて被っていたら、神だという事が瞬時に分かってしまう。人間の街に神が立ち入るには許可がいる。どこの誰かも調べられ、もちろん目的も伝えなければならない。文字どおり一挙手一投足監視されることになる。それでは身動きが取れなくなる。  だから人間に紛れることにした。老師はどこからか人間の服を持ってきてくれた。縞模様のシャツにジャンバーと呼ばれる上着。ジーンズと呼ばれるズボン。目立たぬようにしろと言われ、眼鏡もはめさせられた。背中にはリュックサックと呼ばれる鞄。落ち着いた色合いのものを揃えたが、奇抜な周囲と比べると、むしろ浮いてしまっている。  人間の服装は総じて窮屈だ。落ち着かない。それでもシャツの中にお札が貼られており、体一つ分の結界を張っている。落ち着く。少しばかり安心も出来る。
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