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闇夜の中に松明の列が動く。
その姿はまるで、火龍の蠢きにも見えた。
ユリアンも彼の為に用意された鎧に身を包み、短めのマントを羽織った姿は若武者然としている。
葦毛の若駒に跨り左手に持った采配を高々と挙げると、サッと振り下ろす。
その先は闇に紛れて見えないが、ウルカン関へ真っ直ぐに向いていた。
一斉に駆け出す騎馬隊の中には、勿論シュアン王女とサイールの率いるイシュルトの部隊も見える。
しかし、その中に居るはずのオルブライトと影幌旅団のメンバーの姿は見えなかった。
部隊の中ほどをユリアンと並ぶようにクラトとマール公騎士団副団長のオウルスという壮年の騎士が居る。 先ほどユリアンを紹介した男だ。
少し遅れてナヴァール伯ヴォロック率いるナヴァール騎士団二個中隊が続いた。
「今回の編成は、我々率いる第一部隊の半分をマール公騎士団二個中隊。もう半分をマルリオン護民兵から二個中隊。指揮系統に我が影幌旅団員を二個小隊。そしてイシュルト隊が一個小隊となっています」
クラトがユリアンに説明する。しかし、ユリアンが気にしているのは全く別の事だった。
「ねえ、オルブライトの姿が見えないけど彼はどうしたの?それにアレンとカイトとも会えるかと思ってたのに」
「お気づきでしたか。勿論説明はするつもりでしたが、内密な事なので少しお耳を……」
そう言うとクラトはユリアンの耳元に口を寄せて、手で口元を隠しながら耳打ちをする。
驚いたように軽くユリアンは目を見張ったが、口を開いて言葉を発する事は無かった。
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