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そんなユリアンとクラトの姿を、前衛に配置されたマール公騎士団の部隊の中から見つめる者が居た。
アルシウス子爵だ。
彼は志願してこの征伐隊に参加したが、目的はユリアンの観察だった。
(ハッ、婦女子のような顔をしてあれで剣を振るえるのか?それにしても、影幌旅団の団長と言うあの男……怪しいな。マリオン様の件もアイツが裏で糸を引いていたとしたら……)
刺すような視線に気付いたのか、クラトがいつの間にかまっすぐ自分を見つめているのに気付いて慌てて目を逸らした。
「どうしたの?クラト」
クラトの様子に気付いてユリアンは彼の視線を追った。
兜の下から長い栗色の髪が馬上に靡いているのが見える。
「いえ、何でもありません」
クラトは頭を振ってユリアンに微笑むと、先を急ぎましょうと言って速度を上げた。
流れに乗ったユリアン軍は徐々に速度を上げ、夜の行軍にしては驚異のスピードでウルカン関を目指す。
第二部隊のナヴァール伯軍はじりじりと差を付けられて間が開いていたが、クラトは構わず急いだ。
もとより当てにはしておらぬ。
ウルカンに着いても奇襲攻撃に参加させるつもりはない。
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