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夜が明ける。
野営地の周囲をぐるりと囲んでいる松明が風に吹き消されそうになっていたが、見張りの男は立ったままうつらうつらとしていて気付いていない。
等間隔に歩哨を立てて不寝番を置いてはいるが、圧倒的少数のウルカン関が打って出る事などまずないだろう。
その為歩哨に立つ彼らに多少緊張感が欠けていたとしても仕方無いのかも知れない。
「くぁ、あぁ~あ」
その男は眠気を飛ばすように大きく伸びをすると、眼を擦りながら見上げるように東の空を眺めた。
大分稜線近くは白み始めて、もう間もなく視界も明るくなって来るだろう。 山間の峠だけに明け方でも薄暗さは残るが、暫くすれば松明も必要なくなる。
(そろそろ交代の時間か)
男が呟いて振り返った瞬間、何かが視界の端にひらめいた。
(ん?)
見上げると西の山腹に何かがひらひらと踊ってるのが見える。
慌てて東の山腹にも目を走らせると、そちらにも同じように何かがひらひらと踊った。
「何だ? ありゃあ……」
口に出して呟いた瞬間──
ドドドドドドドドッと地鳴りが夜明けの峠に鳴り響いた。
一番最初に驚いたのは、野営地に繋いであった馬達だった。
ヒヒィィィィイイイン!!
前脚を高く上げ闇を切り裂く嘶きを上げると、繋がれている柵を蹴り飛ばして逃げ惑う。
混乱状態に目を覚ました兵士らの前に現れたのは、東西の山腹から雪崩れ込んだ騎馬達だった。
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