4人が本棚に入れています
本棚に追加
オルブライトは相変わらずの仏頂面で抑揚無く答える。
「クラト様は緊急会議の席におられます。命令により、お二人をお迎えにあがりました」
「会議ならここんところ毎日やってるじゃない?緊急って?」
ユリアンの不思議そうな顔に、落ち着き払った口調でオルブライトは答える。
「所属不明の軍がナヴァール平原に現れ、現在ウルカン関で交戦中でございます。諸侯が派兵の準備をなされていますので、只今臨時軍議の最中で」
「なんだって!?」
一気にユリアンの顔に緊張が走る。
シュアンの瞳もギラリと光った。
「クラト様はこの期に、諸侯にユリアン様を領主と認めさせるおつもりです。新生騎士団は未だ編成が整っておらず、今回は混成部隊での参戦になりますが私共もお供致します。どうか御武運を」
ユリアンは青ざめた顔で言葉も出ない。
勿論、いずれ軍を率いて姿の見えぬ敵と戦わねばならぬとは解っていた。
しかし、それはもう少し先の事だとなんとなく思っていたのだ。
混戦の中でがむしゃらに剣を振るうのとは違う。戦ともなれば目の前で大勢の仲間が血を流す姿を見なければならない。
ナルヴァでは養父や村人の死にゆく姿を見て自我を見失ってしまった。
(またああなってしまったら……また僕の手によって仲間を失ってしまったら……。それが何よりも怖い)
最初のコメントを投稿しよう!