4人が本棚に入れています
本棚に追加
ユリアンは何とも答えようもないままに教えられた席に腰を掛けた。
「こたびは私が連れ出したのじゃ、この者に咎はない」
シュアンが同じ様に腰掛けながら、鷹揚に言った。
諸侯は渋面を作り口を開かなかったが、アリオンは面白そうに目元で笑うと丁寧な態度で答える。
「もちろん解っておりますとも、王女殿下。しかし聞きしに勝る活発なお方だ。このアリオン、感服つかまつりましたぞ」
アリオンは笑顔でそこまで言うと、急に表情を引き締めて真剣な声で話題を変える。
「ただ、本当に間が悪かった。お二人には聞き及びの事と思うが、ナヴァール平原より現れた軍勢が只今ウルカン関を攻撃しておると情報が入り申した」
ゴクリとユリアンが息を飲む音が聞こえる。静まり返った室内に、アリオンの声だけが響いた。
「マール領の南西部を治めるナヴァール伯爵は現在マルリオンに詰めておられ難を逃れておいでだが、伯の話ではユイマール国境に異常は無く、あったとしても必ず軍勢がウルカンを攻める前にマルリオンに伝達されると言うのだ。イシュルトの災難の話を聞き及んでいる故、シュメールからユイマール経由で王女の足跡を追っての事かと思うたが、どうも解せぬ」
「ならば何処から来たのじゃ?そ奴らがイシュルトを襲った者共だという確証はあるのか?」
シュアンがアリオンの言葉を遮る。
その顔には既に、14歳にして将軍の風格が漂っていた。
「それを確かめたいのです。これから討伐に向かうゆえ王女殿下にもご足労願いたいが、お聞き入れ下さいますかな?」
最初のコメントを投稿しよう!