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第一話 乗車拒否4
どちらの会話の輪にも加わる気になれず、空太は注いだワイングラスを眺めた。
「このワインの色、きちんと見たいな」
飲む前に、グラスをかざした。空太はワインに詳しいわけではないが、それでもここが通常のワインの試飲会とはやはり思えない。ワインは目で色を見て、鼻孔で香りを楽しんで、舌で味わうものではないだろうか。
「敬一郎のヤツ、ワインのこと、本当は何もも知らないんじゃないか?見栄でこんな会を開いてるのかな」
他人に対して気取るようには見えなかったので、空太はせっかく増えた友達に少しがっかりしながらグラスに口をつけ、顎を上げて飲もうとした。
「うっ」
口に液体が流れてきたとたん、空太はグラスにそれを押し戻そうとして咳き込んだ。
「ゲホッゲホッゲホッ」
苦しくて、袖口で口を拭った。空太が注いだワインは、確か先ほど敬一郎が注いでくれた同じ瓶だったはずだ。強烈な酸っぱさと澱んだ苦みに喉が飲み込むのを拒否していた。
「なんで?」
注いだ瓶を手に取ろうとして、その瞬間空太は背筋に冷たい氷が滑ったように顔を歪め、手を引っ込めた。瓶の中で何かが動いた気がしたのだ。
何かがおかしい。頭のどこかが動いて身体が逃げ出そうとしていた。これが本能というヤツか?
敬一郎はまだ戻ってきてなかったが、後で何とでも言えばいい。空太はグラスを置いて、ドアへ向かった。
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