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「村の男であれば投石兵として使えるでしょう。シュルツの指揮下に入れ運用は一任します。不審な動きをするようなら敵として処置をするよう伝えなさい」
「はっ」
今は彼らに構っている時ではない。シュルツに任せよう。
歩兵の伝令が立ち去ると、すぐに斥候が報告に入ってきた。
「報告します。敵は約千名ずつ3つの集団を形成、先頭の集団には槍を持った者約100名が含まれ、先頭と第2の集団は移動中です。最後の集団は山の麓の村に停止中。最後の集団には5ないし6騎の騎兵が確認できたので本隊と思われます」
「よく人数までわかったわね」
「敵は夜間歩哨も立てず集団ごと気ままに焚き火をしていたため、下馬で潜入しました」
「1万と称していても実態は約3千名かぁ、先頭の集団に槍兵を持って来たのはこちらの騎兵に備えてだろうけど、各集団の指揮官も含めて貴族は10名前後ってところかしら」
「それぞれの集団の軍旗が確認できないため、指揮官は特定できていません」
「問題ないわ」
「斥候は爾後、6名をもって本隊の動向を解明、爾余は主力に復帰します」
「わかったわ、ありがとう。騎兵隊の主力は軽く交戦の後ここに戻って攻撃を準備します。いくらもないでしょうけど休息をとりなさい」
「はっ、失礼します」
歩兵隊指揮官のシュルツは伝令の報告を聞いて
「それでこそ殿下」とひとりごちた。
集まってくる村人達は道路を歩いてくる者、畑や森の中からやってくる者と様々であったが、広場の鹿柴前に集めてると初老以降の男性ばかりで30人ほどになった。
シュルツには村人達が「味方に来てやったんだから総司令官に会わせろ」と口々に言うのが気に入らなかった。
『総司令官』に伝令を出すのを見せた後、待っている時間を活用すると言って1人ずつ軽歩兵隊の分隊に組み込んでしまっていた。
「まあ、ああやって囲まれていれば悪さも出来ますまい」
副官がにやりとして言った。
部下達は心得ており、村人をそれぞれの分隊内で親切に扱っていた。
実際、投石兵は味方につけば敵の弓に対抗できるので「いやぁ、飛び道具使えるのがいると助かるぜ」等と言いながら水や食料を振る舞われていたが、背後には必ず兵士が一人抜き身を持って目を光らせている。
シュルツが後方に目をやると弓兵達が行李から受け取った鏃の大きな矢を束ねている紐を切って、自分たちの足もとの地面に柵のように刺してしている。
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