宇宙人心理

4/6
前へ
/6ページ
次へ
「君がここに来て、半年ぐらいになるね」 「そうだな。元々、異星人の心理を分析しようとやってきたが、君の部屋が拠点に丁度よかったから住まわせてもらっていた」 「こちらとしても、突然の宇宙人の訪問には驚かされたけれど、部屋に住まわせる交換条件として、君のことを題材に取材をさせてもらい、それを元に小説を書いた。まさか、その小説が古いと言われるとは思ってもみなかったけれど」  通りで伊藤は悔しがらなかったはずだ。伊藤の部屋には現在、モデルとなった宇宙人が住んでいたから。彼に話を聞けばいくらでも話の種はできえる。 「しかし、君も変わっているよね。地球人の心理分析をしたいなんて」 「この星も、ある程度、進歩したからそろそろ、調べてみてもいいと思ったまでさ」 「僕からしてみれば、君の心理の方が不思議さ。生物的な違いがあるとはいえ、地球人とは異なる思想。実に興味深いよ」  伊藤はそう言いながら、二つのグラスに酒を注ぐと、一つはエム星人に差し出した。宇宙人が酒を飲むのかと思ったが、エム星人の星でも普通に飲まれているらしく抵抗無く酒を飲んでくれた。  ただ、極端に酒に強いという訳でもなく酒を飲みしばらくすると、エム星人の青みを帯びた肌が真っ赤になる。十分もすれば彼はすっかり上機嫌になる。 「そもそも、私がやっていることは大事なことなんだ」 「大事なこと?」 「不思議だと思わないか?地球人、エム星人と違いはあれど大昔は原始的な生物から始まった。いや、私達だけではない。他のどんな生物だって、始まりは原始的なところからだ。それが、長い長い時間をかけて、ここまで進化した」 「確かにそうだな。どんなに優秀な宇宙人も、宇宙人が実在することを知らないどこかの偉そうな編集長も、原稿を落とされた作家も、全ては同じだった」 「だからこそ、興味深い。まだ進化の過程にある生物がどんな心理状態であるのか。そして、それが、どのように変化していくのか。それを調べるのが楽しくて仕方ない」 「なるほど、僕達、地球人は君達、エム星人に比べるとずっと若い存在だ。興味を抱き調べたくもなる」
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加