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古びた喫茶店に、四十歳位の男性がひとり、座っている。テーブルには、珈琲が置いてあるが、飲む気配はない。店内に入ってから、一時間この状態だが、店員も何も気にせず仕事をしている。
一時間過ぎた頃、カランカランと、入り口のドアの音が聞こえた。そして、老人が一人入っきた。
老人は言う。[久しぶりですね。あれから、もう三年なんですね]と、懐かしそうな眼差しで。男性も[ほんとに。お会いできて、嬉しいです]と、笑顔を見せた。
そうして、十分ほど、会話をすると、[さて、そろそろ時間じゃ。名残惜しいですが、また]と、丁寧に頭を下げて、お店を出て行った。
そして、男性は、また、ひとりになった。
しかし、しばらくたつと、また、カランカランと、お客さんが、入ってきて、男性の前に座った。
今度は、若い女性だ。そして、また[お久しぶりですね。あれから...もう、15年ですね]と同じような台詞を口にした。ただし今度は、15年。
そして、また、十分ほどで、退席して、男性は、
ひとりになった。女性は最後に[ほんとに、ほんとにありがとうございました]と、笑顔で言って去った。その後。男性は、急に、浮かない顔になった。[いよいよ最後..]と呟いた。
男性は、最後の一人と会うことがとても怖かった。カランカラン。ドアの音がした。今度は、小さな男の子が入ってきた。5歳くらいだろうか。男性の表情は、今までとうって変わって強張る。[昴か?]と、男性は、恐る恐る、男の子に尋ねる。男の子は、[うん]と答える。その瞬間、男性の目から、涙が溢れてきた。[どうしたの]と少年が心配そうに、首を傾げる。[ごめんな、昴!俺のせいで、お前は...!]男性は、嗚咽を漏らしながら、少年に謝る。少年は[なんで?僕は悲しませたくて、謝って欲しくて、会いにきたんじゃないよ]と言う
。[だって、俺が、赤ん坊のお前を落としたから、お前は!]男性は叫ぶ。。[お兄さんも、まだ子供だったから仕方なかったんだ]と。[あれから、三十年、また、会うことが楽しみだたんだヨ!さあ、お兄さん、虹の橋に行こう。僕たちの他にもお兄さんにお世話になった犬達皆待ってるよ]男性は、涙ぐみながら、[ああ、そうか。みんな、約束守ってくれたんだな]と答える。約束…それは、幼い頃から、動物好きで、たくさん育てた、男性が、みんなと最後のお別れのときに交わした約束…
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