983人が本棚に入れています
本棚に追加
第1話 Find up
ドン――ッ！
躰に振動が伝わるほどの音と同時に花火が上がり、うわぁーっ、という大歓声が屋内の会場にこもった。
前方のステージ上は花火の煙が充満し、幕の役割をして人を隠す。
やがてステージ上の煙がとれると、主役たちの姿は消えていた。
観客はぽつぽつと立ちあがり、やがて流れるように出口へと向かいだす。
そのなかで独り、一階席の後部にいた少女は再び座席に腰をおろした。
この位置からはせっかくの主役たちの姿も、カラフルチョコでコーティングしたピーナッツにしか見えなかった。
画面越しは遠く、けれど、じかに見てもステージまでは遠すぎる。
どんな表情なのかさえつかめない。
まだ……迎えにきてくれないんだ。
八掟叶多(ﾊﾁｼﾞｮｳｶﾅﾀ)はそっとつぶやいた。
最初のコメントを投稿しよう！