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電話していいと云った――のではなく、迷う必要ないだろう、と云われて電話をかけるものの、戒斗が電話をとるのは数えるほど。
おそらく半分もない。
叶多はとりあえず扇風機で暑さをしのぎ、床に座りこんでベッドに寄りかかった。
ようやくクーラーがきいてきて汗が引き始めた頃、叶多は携帯電話を開いて番号を呼びだす。
七回のコールで通じた。
コールは長くても十回までと決めている。
通じたとたんに、わさわさとした人の気配と楽器の雑音が聞こえた。
「戒斗、仕事中? 音が聞こえてる」
『明日のリハーサルやってるけど、いまはちょうど休憩時間だ。スタッフが音の調整をしてる』
「順調?」
『当然』
「戒斗、えっと……あさってはこっちに帰ってくるって云ってたよね?」
『ああ』
「……会いたい」
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