第3話 Crybaby

3/58
前へ
/407ページ
次へ
『そっち、行く暇がない』 「だったら、あたしが戒斗のとこに行く。土曜日だし、戒斗の家に――」 『日曜日に横浜でやるライヴの最終打ち合わせがあるし、何時に帰れるかわからない』 会いたいと云うだけでも叶多がどれだけどきどきしたのか、それを知らない戒斗は淡々とさえぎった。 「帰るまで待ってるから――」 『叶多、おまえはまだ高校生だし、むちゃやるわけには――』 「冗談だよ! ちょっと……戒斗を困らせようと思っただけ」 戒斗に最後まで云わせないまま、努めて明るく云い訳をすると、叶多は少し上を向いて涙がこぼれないように目を瞬いた。 承知することはないだろうと見当をつけていたにもかかわらず、実際に戒斗の拒否を聞くと自分の立場が曖昧になっていく。
/407ページ

最初のコメントを投稿しよう!

984人が本棚に入れています
本棚に追加