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『そっち、行く暇がない』
「だったら、あたしが戒斗のとこに行く。土曜日だし、戒斗の家に――」
『日曜日に横浜でやるライヴの最終打ち合わせがあるし、何時に帰れるかわからない』
会いたいと云うだけでも叶多がどれだけどきどきしたのか、それを知らない戒斗は淡々とさえぎった。
「帰るまで待ってるから――」
『叶多、おまえはまだ高校生だし、むちゃやるわけには――』
「冗談だよ! ちょっと……戒斗を困らせようと思っただけ」
戒斗に最後まで云わせないまま、努めて明るく云い訳をすると、叶多は少し上を向いて涙がこぼれないように目を瞬いた。
承知することはないだろうと見当をつけていたにもかかわらず、実際に戒斗の拒否を聞くと自分の立場が曖昧になっていく。
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