984人が本棚に入れています
本棚に追加
『叶多――』
「ユナがね、夏休みにこっちでライヴやるときに行きたいって。それでカレシの時田くんと親友の渡来くんも。チケット取れないかな」
戒斗の声が聞こえないふりをして叶多は話題を変えた。
泣き虫はいつまでたっても直らず、これ以上に戒斗の口からなだめる言葉を聞いたら、せっかく堪えた涙が溢れてしまいそうだ。
普通に声が出せているはずなのに、戒斗は返事することもなく不自然に沈黙した。
「……戒斗、聞いてる?」
『ああ、聞いてる』
そう云っただけで戒斗は答えない。
「それで……取れるの……? えっ……と……怒ってないよね?」
『何が?』
最初のコメントを投稿しよう!