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あれから何度かの失敗や成功を経て今の僕がある。
僕の人生は、小ニの時に悟ったように普通だった。
どの成功も失敗も、当たり前だが新聞やニュースになるものではなく、誰もが経験しうるものにすぎない。
あのあと、僕は何度かの失恋もした。
初めてこれが恋だと自覚したものも、咲かずに消えた。
僕は普通だ。
小ニの時に感じたそれを、いつかは払拭したくなったこともあった。でも、そのうち普通ということに落ち着くのだ。
留年や浪人をすることなく、かといって楽でもなく、就職活動も上手くはいったが、受けた会社は両手を越える。
そのうちに今の家内と知り合って、特段書き連ねるようなドラマチックな出来事はなく、結婚を申し込み、所帯を持つ。
彼女もまた、僕と同じように普通で、それを自覚した人だった。
得意なことは料理、とは言わない。ただ、料理が好きだという程度だ。不味くはない。食べればおいしいという。でも、時々は外食したくなる。
共働きも昨今は当たり前であるし、僕からしたら、ありがたい話だが、家事も文句言わずにやってくれていた。
だから、僕もゴミ出し、風呂掃除、茶碗の片付けなどは引き受けた。
この時代、夫がゴミ袋を片手にいても、不自然ではない。
僕の両親は、人生を楽しむ人達だった。年相応に体力も衰え、病気も持ってはいたが、旅行に観劇などは充分楽しめていた。
妻の両親は、母親が妻が大学生の時に亡くなっていた。父親は隣の町に一人で住んでいるが、近くに妻の兄が家をかまえている。
これといって趣味を持たず、言葉が少ない。妻に言わせれば頑固者というが、芯の通った人だと思う。付け加えて認知症もなく体も丈夫であり、何の問題もない。
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