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『──あなたのような書生ふぜい……!』
僕は、欲を出してしまった。
『相手にしようはずがありません!』
あの日の切り裂くような声。
投げつけられた言葉はもっともで、それなのに僕の心は悲鳴を上げて。
気がつくと、視界いっぱいに花吹雪のような紅が散っていた。
見開いた君の瞳が紅に染まる。白い頬も、艶めく黒髪も、喉元から噴き出す紅にしとどに濡れていく。
僕は強張った笑い顔で、ただそれを見ていた。
だって愛していたんだ。
心から、全霊をかけて愛したんだ。
千切れるほどの愛しさを、どうしてわかってくれない?
だから殺した。僕が殺した……。
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