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・・・あれから10年が経った。
君が人類を全て滅ぼして、いや、僕以外の人間を根絶やしにしてから丁度10年だ。
あの日のことを、今でも僕は昨日のことの様に覚えている。
君は屈託なく笑ってこう言ったよね。
「貴方さえいれば何も要らない。貴方さえいれば誰も要らないわ。」
「何故、それ程までに僕に固執するんだ?僕は、特に取り柄もないごく普通の人間じゃないか。」
僕はその時そう訊いてみた。
「それがいいの。そうでなかったら選ばなかった。普通だからいいんじゃない。」
だから、僕はずっと普通であろうとこれまで自分を押し殺してきた。表面的には・・・。
君は、先日言ったね。貴方は、ペットなんかじゃない。大切な家族だって。失うことの出来ない大事なファミリーだと。
丁度10年か。人間の持つべき感情というものを理解できない異世界から来た来訪者である君に、僕がそれを教え続けて・・・。
いつもの笑顔で君は部屋にやって来る。
僕も、尻尾を振らんばかりの笑顔で君を出迎える。
君は不死者だ。だから誰にも、どこの国の軍隊にも君を殺すことは出来なかった。
僕は、君の目前でナイフを首に押し当てて、静かに引いた。
10年は実に長かったよ。ようやくにして、君に復讐する時が来た。感情を向ける拠り所を失った僕には、本当に何もない。人類最期の一人となった僕にとって、自分の命を自ら絶ってしまっていいものか、決断をするまでにも10年の時を必要としてしまった。
明日から君はひとりぼっちだ。たったひとりで生きていくんだ。
目を大きく見開いて凍りついていく君の顔が、僕の最期の記憶になった。
反対に僕は屈託のない笑顔を向けていた筈だ。ザマアミロ!
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