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ゆっくりと立ち上がり、手を繋いだまま彩子達は歩き出す。
もう片方の小さな手に繋がれているのは大きくて繊細な亮介のもの。
小さなえみりは心なしか緊張しているようにも見える。
それでも離れるまいとそれぞれに繋がれている手をキュッと握りしめていた。
「……今日はありがとう
私のワガママに付き合ってくれて……」
彩子がそう言うと、亮介は小さく首を振った。
「いや……」
フッと微笑む目尻にはだいぶしわが増えた。
髪にもチラホラと白いものが混じっている。
甘い笑顔は、あの頃彩子には見せなかったものだ。
小さなえみりには平気で無防備な笑顔を晒すけれど、彩子には遠慮がちな微笑みしか相変わらず向けてはくれない。
それでも冷たく厳しい顔しか見せなかったあの頃から比べたら、ずっと居心地は良かった。
黒のカシミアのコートに身を包むその姿は、同じ年代の男性から見ればずっと、若々しく素敵に見える。
彩子がどんな仕打ちを受けようと執着した相手。
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