彩子side-end

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目を閉じながら、5年前のあの日を思い出す。 最初は月のものがこないのも、年齢的なものだと彩子は思っていた。 そのせいで体調もよくないのだと。 もしかしたら、少し早めの更年期障害かもしれないなどと思いながら、一向に良くならない身体の重さに彩子は程なくして婦人科を受診した。 尿検査と内診を終え診察室に入ると、思いの外医師の顔は朗らかで、次の瞬間伝えられた言葉に彩子は耳を疑った。 「おめでとうございます 妊娠4週目に入るところですね」 妊娠?そう彩子は聞き返す。 身に覚えがない違和感に呆然としながら、彩子は医師の顔をまじまじと見つめた。 医師はその彩子の反応をどう捉えたのか、大丈夫ですよ?と、高齢出産へのリスクを語りながらも、安心させるように一緒に頑張りましょうと笑顔を見せる。 その声をどこか遠くの方で聞いてるような錯覚に陥りながら、彩子はあらゆる可能性を模索していた。 ようやく彩子の中で何かがカチリと音を立ててパズルのピースがはまっていく。 そして一つの答えを導き出した。 「……どうされますか?」 じっと黙ったままの彩子に、医師は心配そうな顔で窺うようにそう言った。 そこでやっと現実に引き戻された彩子の答え。 それはもちろん…… 「よろしく……おねがいします!」
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