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まず彩子が提示したのは別居という形。
離婚はしないけれど、この家には住めない。あなたとは生活しない。
つまりはそういうことだ。
彩子とえみりは別の場所で暮らすことが第一条件だった。
だからといって、亮介の出世の道を阻むつもりなどない。
そこはブレずに彼の夢を応援したかった。
身の回りのことも家事も疎かにするつもりもなく、彩子が次に提示したのは対価だ。
今までと変わりなく家事も接待もいい妻として亮介を支える代わりに、それに見合った金額を支払ってもらう。
つまり仕事として認めてもらうことで、別居する際の家賃や生活費を相殺するというものだ。
通いで妻という役割をこなし、仕事が終われば自宅に帰っていく。
えみりもまた、一緒に通うことで、会社の人を招いてのパーティでも違和感なくあの家で過ごすことができる。
自分のエゴだとわかっている上での決断は、この5年わりとうまくいっていた。
双方に特に不満もない。
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