彩子side-end

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もし、自分だったならあのとき彼を受け入れていなかったかもしれない。 事実、元の体に戻ってから、彩子は亮介と一度も交わってはいないのだ。 あの日、えみりの身体で亮介に抱かれた時、嫌というほど彩子は思い知った。 自分に求められているものがなんなのか、女としてではない妻という立場なんだということを。 だから、彩子は決めたのだ。 もし、元の体に戻れたなら、妻として仕事のパートナーとして、亮介を支えていこうと。 女の悦びなど、もうとうに捨てていた。 えみりに触れる亮介は確かに亮介なはずなのに、彩子の知らない顔をして、彩子の知らない声で、指で、えみりを慈しんでいたのだから。 結婚してから一度も、身体を重ねる時でさえ義務のような、そんな悲しいものだった彩子にとって、あの出来事はそのくらい衝撃的なものだった。 だから、彩子はえみりに負けない土俵で亮介に必要とされようとしたのだ。 そこに訪れた妊娠という事実。 亮介が彩子の中で果てたという証。 あんなに焦がれても叶わなかったそれは、あっさりとえみりに奪われたのだと、複雑な思いが彩子を支配した。
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