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「「はあ!?」」
「ちょっと、声がでかいっ」
紅葉も盛りを過ぎ、一部の街路樹が葉を落とし始めた頃。
久々に一日内勤オンリーだった私は、同期の美香とその彼氏兼先輩の森さんと食堂の隅で優雅にランチライム――とはいかず、何とも気まずい心持ちで尋問めいたものを受けていた。
「何それ! あんた達が付き合い始めたって聞いたの一ヵ月くらい前なんだけどっ」
「有り得ん! 良い歳をした大人のカップルだろお前ら!」
「はあ・・・」
興奮状態の二人に捲し立てられるように言われたところで事実なのだからしょうがない。
というのも、その一ヵ月前に晴れてお付き合いすることになった『我らが一課の鬼』こと榊課長と私だったのだが、今の今までカップルらしいお出掛けをしたのはたった一回。
しかも、お世話になっている近所の居酒屋『酒のみや』に赴き、飲み食いするついでに付き合いを報告するという至って淡白もの。
デートと言って良いのかちょっと疑問に思う様なお出掛けをしただけだった。
個人的には別に付き合いを焦ることはないと思っていた。
何たって互いに忙しいのは嫌という程分かっている。
真面目に働いている課長の姿を仕事中に見てしまうと、邪魔をしたくないという気持ちが一番に湧く。
さらに、そんな頑張っている姿を見るのも結構好きだったり、あの人が自分の恋人だと思うだけで嬉しかったり――
「どこの高校生よっ」
照れる気持ちをどうにか我慢しながらも、現在の心境を語っていたところを思いっきり遮られる。
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