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そして男どもは人の苦労も知らずに、羨ましいだの死ねだの、むやみやたらに嫉妬に狂った。
また、女に近づこうと卑しい商人のような目をして媚びへつらってくる野郎もいた。
このままではまともな学生生活すらままならぬと思い、担任に救済を求めたこともあったが、その木偶の坊は「ははは。モテる男は辛いね、君」と適当言ってはまともに取り合わなかった。
その担任教師にとっておれは、ただ良い成績を取るだけのマシーンのようなものだったのだろう。
過去に職員室で、おれの成績をあたかも自分の手柄であるかのように声高に吹聴しているのをたまたま立ち聞きしたことがあった。
男子生徒も女子生徒も教師でさえも、おれに対しては、醜い感情を持って近づき、底のない真っ黒な沼に引きずり込もうとしてくるのだ。
逃げ場がなくなったおれは、日に日に登校する回数が減り、最終的には全く学校に行かなくなった。
そして、積み重なったストレスの反動なのだろうか、何事に対してもやる気が出なくなった。
何もせず、だらだらと死んでいきたかった。
そうして、働く竜胆を尻目に、おれはビーズソファに身体を沈めて一日中うつらうつらと微睡んだり怠惰な生活を送っていた。
喉が乾いたと言えば飲み物を持ってきてくれ、腰が痛いと言えばマッサージをしてくれた。
気づけば竜胆は完全に雑役婦兼おれの召し使いになっていた。
なぜ彼女が何も文句を言わず、そこまで従順に尽してくれるのかは不明であったが、存外快適な暮らしだったのであまり気に留めなかった。
が、それでもやはり家の中には、おれの他に人間が血の繋がっていない一人だけしかおらず、少し寂しかった。
時が過ぎ、季節は移ろえども、親父がいた頃を思い返しては、夜、自分の部屋でこっそり泣いてしまうこともあった。
ああ、本当の母親がいればこんな気持ちにならなかったのだろうか。
──孤独。
時にはそんなことも考え、ちょっぴり悲しくなった。
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