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「……子供?」
一瞬にして驚いて和士の声音が変わったのが解った。
「そう、大和って言うのよ。一年生になったわ」
溢れる涙を拭って私は言った。私に子供が居れば、もうなんの未練もなくなるだろうかと言う、自棄糞にも近い気持ちだった。本当の事までは言えないけれど、私は大和の事を知って欲しかったのかも知れない。和士は私の肩に手をかけたまま、大和をじっと見ていた。
「大和くん、一年生?七歳?」
「うん」
和士の戸惑った言葉に大和ははつらつと答えていた。
「おいで、大和くん」私の肩を抱いたままに和士は大和に手を延べた。大和は素直にその腕に引かれる。
「ありがとう、大和くん。お母さんを守ってくれて」
そう言って和士は大和の肩をぎゅっと抱いていた。私はその言葉に顔を上げて和士を見た。
「この子は俺の子だろ?小さい頃の俺に似てる」
大和を抱いたままに、和士はあっさりと私にそう言った。私はその時どうしていただろう。涙が止まらなかった事しか解らない。
「沙耶、やっと迎えに来れたんだよ」耳元で和士が言った。
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