ー八年前・涙ー

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 その日の帰り道。ただの偶然で、誰のせいにも何のせいにも出来ない事故があった。幸宏の車の先を走っていた和士のバイクがカーブを曲がりきれずにスリップした。それを避けようとした幸宏の車も避けきれずに、多重事故になった。私は和士のバイクの後ろに乗っていた。  訳もわからない衝撃を受けて、放り出された私は何が起こったのかも解らずに意識が途切れた。きっと、みんな同じだ。  気付いたら、病院にいた。何が起こったのか説明されても全く解らなかった。母に訳も解らないままに、泣いて罵倒された。和士は、梨香は、幸宏はと訊いても答えはもらえなかった。バイクから放り出された私は生きていただけでも良かったと言われた。でも、私がそうならば、和士は?と言う問には答えられなかった。和士も、梨香も、幸宏もどうなっているのか解らないままに私は母の一存だけで地元の病院に移された。大学も中退させられていた。  一番好きな人とも、心を許せる友達とも無理矢理離されて私はただ泣いた。母は私を罵倒するばかりだった。馬鹿みたいに遊んで遠くの大学にやった意味がない、と。
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