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ー八年前・告白ー
実家のある市とは離れた大学に通うことになった私は大学の近くにアパートを借りて一人暮らしをしていた。近くには同じ一人暮らしの大学生が多かった。偶然にも同じアパートに同じ年の女の子が住んでいて、私はすぐにその子と仲良くなって、周りとも馴染むことが出来た。
「沙耶!今日の夜、幸宏がドライブ連れて行ってくれるって!沙耶も行くでしょ?」
「うん、行く!和士くんも来るのかな?」
「来るよ、絶対。だって、和士ってば沙耶狙いなのバレバレなんだもん」
「バイクの後ろ乗せてもらおうっと」
私と梨香とその彼氏の幸宏、それから和士と四人、暇さえあれば一緒に、遊んでいた。遊ぶと言っても、お金のない大学生なので自宅でビールを持ち寄って朝までくだらない話をしたり、梨香の彼氏の幸宏がバイト代を叩いて購入した車でドライブすることが殆どだった。車で小一時間も行くと、夜景の眺めが良い地元の人間しか知らない公園があって、よくそこまでドライブした。和士はバイクで来ることもあった。
「幸宏と和士、バイト十時上がりだって言ってたよ。迎えに来るの十時半くらいかなあ」
「私も今日はバイトなんだ。十時までだから、二人が来るまでには帰ってると思うけど」
一人暮らしでなくても、大学生の殆どは何らかのアルバイトをしている。私も、多くはない仕送りの足しと、それから自分の自由になるお金欲しさに週に三回ファミレスでバイトをしていた。夕方六時から十時まで。
その日も時間通りにバイトを上がれるかと思っていたのに、九時半位に集団のお客さんが入ってきてしまって、忙しくなって一段落するまで居た私が更衣室に着替えに入ったのはもう十時十五分を過ぎてた。着替える前に梨香にメールを入れる。
「ごめん、バイト長引いちゃった。帰るの十時半過ぎる。待っててね!……っと、これでよしっと」
梨香に遅れる連絡をした後、それでも私は急いで着替えをして、靴を履き替えバイト仲間に挨拶をしてすぐに更衣室を出てアパートに向かおうとした。メールの着信音が鳴って、慌てて確かめる。梨香からの返信かと思った。
「あれ?和士くんだ」
画面を確認した私は思わず声に出して呟いた。
「だれー?かずしって。沙耶ちゃんの彼氏?」
「違うよ。友達」
バイト仲間の女の子が冷やかしてくる。
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