ー八年前・告白ー

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 メールの本文を見ると、短い文章が並んでいた。「迎え位に行くから、バイト先で待っていろ」と。梨香から私が遅くなるというのを聞いたのだろうな、と私は思った。幸宏と和士が私と梨香を迎えに来るのは十時半くらいと言っていたから、先に梨香を迎えに行ってそれから私をバイト先まで迎えに来ると言う話になったのだろう。 「急いでたんじゃないの?沙耶ちゃん」 「うん。だけど、友達が迎えに来てくれるって」 「友達?彼氏じゃないのー?いいなあ」  同じ年のバイト仲間の女の子は楽しそうに言う。私は「違うよ」と言って、更衣室を出て休憩室で椅子に座った。さっきまで急いでいたのに、急に時間を持て余してしまって、携帯電話でメールをチェックしてみる。そうしているうちに、メールの着信がまた鳴った。和士からで、「ついたよ」と一言。  私は今度こそ、急いでバイト先のファミレスを出て、通りに出る。 「よ。お疲れ、沙耶」  そこには、道路の脇にバイクを停めた和士が居た。私はてっきり、梨香や幸宏も一緒だと思っていた。 「あれ?和士くん、一人?」 「そう。俺一人だけど。いや?」  和士の言葉はバイクの排気音とフルフェイスヘルメットに遮られているせいで、くぐもって聞こえる。 「嫌じゃないよ!幸宏くんは先に梨香のこと迎えに行ってるの?」 「うん。現地集合だってさ」  私は和士からヘルメットを受け取った。ふと、夕方の梨香の言葉が私の頭をよぎった。「和士ってば沙耶狙いなのバレバレ」梨香はからかってそう言うけれど、私は全然そんな風に感じたことはなかった。バイクに乗る時の和士に後ろに乗せてと頼んでも、一度も乗せてくれたことはなかった。 「今まで一度も乗せてくれなかったよね、後ろ」 「いやなの?沙耶」 「嫌じゃないって言ってるでしょ。振り落とさないでよね」  スカートじゃなっくてよかったな、と思いながら私は初めてバイクの後ろに跨った。思いの外高さがあって、和士がバイクの車体を少し倒して乗りやすいようにしてくれた。 「ちゃんとつかまってろよ」 「うん」  私はそう返事して、和士にしっかりとしがみついたら、バイクは車道を走りだした。もうすぐ夏だから、私は薄着をしていたけれど、バイクで風を切ると思いの外風が冷たい。夜の車道は車が少ないけれど、車との距離が凄く近くに感じる。少しだけ怖いな、と思ったけれど想像していたよりもバイクで走るのは気持ちよかった。
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