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いつもいつも、私は和士のバイクの後ろに乗せてと強請っていたのに、危ないからと乗せてくれなかった。幸宏と二人でとても仲がいいけれど、私や梨香には控えめでいつも優しかった。もっと優しくして欲しかった。
夜風が吹き抜けて、夏も近いのに涼しい風が抜けた。普段なら気持ちいいと感じるはずなのに、薄着のままバイクの後ろに乗った私は寒さを感じて一つ、くしゃみをした。
「その格好でバイクはまだ寒かったな、そう言えば。帰り、幸宏達の車乗ってく?」
「ちょっと待って!私、まだ返事してないよ!」
握っていた手を離されて、私はつい大きな声で言ってしまった。
「だって、沙耶、人の気持ち賭け事にするなって」
「それは怒るよ!いやだけど!」
「……だけど?」
「……私も、和士くんが好き。だから、帰りもまた後ろ、乗せてよ」
そう答えたら、和士の腕に引き寄せられて抱き締められた。私は自分で言ったことだけでいっぱいいっぱいになってしまっていて、物凄く驚いた。好きだと言うだけで、心臓がばくばくしているのに抱き締められて追い打ちをかけられる。耳元で和士が「ありがとう」と呟いた。
夜景の見える山の上の公園の駐車場で初めてキスをした。夜景なんて見えなくて、和士の肩の向こう側に満月が綺麗に見えた。結局、その日は梨香達とは合流しなかった。夜景の見える公園で、自動販売機の暖かいコーヒーを飲んでから、和士の後ろに乗って、アパートまで送ってもらった。
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