13人が本棚に入れています
本棚に追加
ー八年前・涙ー
相も変わらず、私と梨香と和士と幸宏はいつも一緒に遊んでいた。私と和士は付き合うことになって、和士はよくバイトの帰りには迎えに来てくれる様になった。
「なんで前まで後ろ乗せて、って言っても乗せてくれなかったのよ」
「危ないから。コケたら怪我じゃ済まないかもしれないんだぜ」
「じゃあ、今はなんでいいのよ」
「コケないよ、沙耶を乗せて」
「一人の時も!絶対に事故らないでよ!」
「了解」
そう言って、和士は笑った。四人でドライブに行く時は私は和士のバイクの後ろに乗って、梨香は幸宏の運転する車で二台で行った。たまに和士がバイクに乗らない時は幸宏の車を和士と交代で運転していた。
一年が過ぎた。私達はたまには喧嘩もするけれど、四人で居るのは変わらなかった。誕生日に和士から、シルバーのシンプルな指輪を貰った。
「卒業したら、一緒に暮らそう」
照れくさそうに言った和士の言葉に私は頷いた。私は本気で和士が好きだった。当然の様にずっと一緒にいるつもりでいた。左手の薬指にはめた指輪を梨香は羨ましそうに茶化した。初めて貰った指輪は私を舞い上がらせ、幸せにした。シルバーの指輪は私の一番大事な物になった。
ファミレスのバイトが終わると和士が迎えに来ているとメールが入っていた秋口になるある日。和士からのメールの前に梨香からもメールが入っていた。
「十二時回ったら、和士誕生日!サプライズ花火、夜景の公園!」
何日か前から梨香と幸宏が何か企んでいるな、と思ったけれどそういう事か、と私は笑った。私も誕生日のサプライズをするなら乗ろうと思って、バイト先をうずうずするのを堪えながら出た。私の誕生日も祝われたし、梨香の誕生日も幸宏の誕生日もみんなで祝った。和士にプレゼントを渡すのは、今日の帰りか、明日でいいかな。
道路の脇、定位置で和士の黒いバイクが停まっている。
「お待たせ!」
「お疲れ、沙耶。メール来てたか?公園の駐車場現地集合って」
「うん、来てた」
「あいつら、絶対に何か企んでいるよなあ」
和士は苦笑しながら私にヘルメットを渡す。誕生日に気付いているなら、サプライズになるかどうだろう。でも、梨香達が何を考えているかまでは想像ついていなさそうだ。
「いいじゃん。行こ」
バイクの後ろに乗って和士の肩を一つ叩いた。エンジンが吹かされて、バイクは夜の道を走り出す。
最初のコメントを投稿しよう!