ー八年前・涙ー

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 私は和士の後ろに乗って夜の道をバイクで走るのが好きだ。昼間いくら暑くても涼しい位の風を切って走ると気持ちいい。冬は肌を差す冷たい風になるけれど、やっぱり好きだ。秋口の夜風はもう冷たく感じる。山の上の公園まではもう何度も走った。山頂近くなると見えはじめる夜景が流れる様に見えるのが好きだ。  公園の駐車場で幸宏の車をすぐに見つけて、和士は隣の駐車スペースにバイクを止めた。エンジンを切って、和士がヘルメットを脱いだ瞬間。  ぱーん!と幸宏の車の向こう側から弾ける音が鳴ったと思ったら、真上に花火が上がった。「うわ!」と和士が声を上げる。私もびっくりした。花火とは知っていたけれど、こんないきなりだとは思わなかった。 「ハタチ一番乗りおめでとう!」  車の向こう側から梨香と幸宏の大声がした。 「まだ三十分位早いよ!」  大笑いしながら和士が叫んだ。それに更に私はびっくりする。和士がこんなに大笑いしてるのは珍しい。普段はどちらかと言うとクールな感じなのに。  私はヘルメットも脱がないままにあっけに取られた。しばらく笑い倒した後で、和士が私に気付いてヘルメットを脱がせてくれた。その間にも花火は打ち上げられ続けている。  季節外れの花火が人の少ない夜の公園の駐車場で弾けて光って消えて、一番綺麗だった。そう言えば、初めて四人で遊ぶようになってからみんなで初めて祝ったのも和士の誕生日だった。ちょうど一年前。和士の誕生日が一番早い。やっぱり、幸宏が企んで祝った。 「おめでとう、和士」  まだ日付は変わっていないけれど、気の早い誕生日祝いを言ってぎゅっと和士に抱きついた。 「ありがとう、沙耶」  和士はまだバイクに跨ったままで体をひねって、私の頬にキスをくれる。梨香達が見てるな、と思いながら私は凄く幸せだった。一番好きな友達と一緒に一番好きな人の誕生日を馬鹿みたいにはしゃいで祝う。そんなに楽しいと思う事は今までなかった。  十二時過ぎて、和士の誕生日の日に変わるまで梨香達が用意した花火で駐車場で四人ではしゃいで遊んだ。日付けが変わった時に、大笑いしながら花火を振り回している和士の腕を引き止めてもう一度おめでとうを言った。今までで一番の笑顔で私は和士に抱きしめられた。
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