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翌日、私は、当時の飼い犬がもらったのと同じ種類のドッグフードを買ってきた。けれど今の飼い犬にはやらず、ただ隣に箱を置く。
その日の内にドックフードは消えていた。
確かめるまでもないとは思ったけれど、念のためと、取りつけたままのカメラ映像を見る。
今の愛犬が、かつての愛犬の元へドッグフードの箱を持って行く図が映っていた。
尻尾を振りながら当時の飼い犬がそれを受け取る。同時に、半ば透けていた姿が完全に掻き消えた。
やはり、目当てはそれだったのか。
当時は珍しかったドッグフード。ご褒美でもらう以外は口にできなかったドッグフード。
またガラクタを拾ってきて、人間にとっての事件を解決すれば、それをもらえると思ったのか。でも自分だけではどうしようもないから、今の飼い犬に仲介役を頼んだのか。
何がきっかけで、再びこの世に迷い出たのかは知らないけど、四十年も経っているのに、そんなにあのドッグフードは美味しかったんだな。
ふと見れば、庭から家の中を、今の大切な飼い犬が覗いている。その傍らに寄ると、私は、当時の飼い犬のために尽力してくれたこのお利口さんの頭を撫で、ご褒美に、コイツが大好きなドッグフードで餌入れを満たした。
犬のご褒美…完
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