犬のご褒美

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 今はゴミの管理もうるさいのに、どこで見つけてきたんだというような品々を、犬は得意げに持ってくる。それを溜め息と共に見ていた私は、とある事実に気がついた。  汚れたシャツと靴、錆びた鎌、壊れた腕時計…昔飼っていた犬が、殺人事件の被害者の元から持って来た品々に、あまりにも似すぎている。  もしや、近所でおぞましい事件が再び起きたのだろうか。  そう思い、犬がどこへこれらの品を持ちに行くのか、後をつけようとしたが、ふと、目にする品に違和感を覚えた。  シャツも靴も時計すら、デザインが古すぎる。  昔の飼い犬が見つけた品によく似た…いや、そっくりと言っても過言ではないガラクタ。つまりそれは、今となっては流行遅れすぎる品々だ。  一つや二つならいざ知らず、今時、こんなにも持ち物の総てが流行遅れの人間などいるだろうか。  むろん、遠い昔の遺体を今になって犬が探し当てた可能性もあるが、そこまで古い死体なら、身につけていた品々はもっと風化しているだろう。そもそも、この近所は大々的に土地が宅地用に整理され、あちこち掘り返されまくった場所だ。犬がちょっと掘り返したくらいで死体が発見されるような場所などない。  不審に思い、私は、犬の首にもう一つ、外せない程ぴっちりとした細い金属の首輪を取りつけた。そこに小型カメラを搭載し、脱走を待つ。  三日程して、犬はまたどこからか、古ぼけ汚れた品を持って来た。それを確認した後、カメラの映像に目を向ける。  ただ、風景が犬の速度で流れる映像が存在しているだけだった。  うろうろと散歩を楽しんでいるだけで、犬はどこにも立ち寄らないし、ましてや何かを取ってくる様子もない。  いったいとせういうことかと映像を送る。その終盤に、唐突に答えが出現した。  我が家に帰りつく寸前、一匹の犬がウチの犬の側に寄って来て、その鼻先に何かを置いたのだ。  その、寄って来た犬を見て私は愕然とした。  間違いない。アレは昔ウチで飼っていた犬だ!  もうとっくにテンに旅立ったの当時の飼い犬が、今の飼い犬の前にガラクタを置く。そして去って行く。…その映像の姿が微かに透けて見えた。
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