阿部対馬

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ーーーいや、それはないだろうな。 対馬は自分の前を歩いて行く二人の後姿を見て思った。 二人は脆い関係でありながら、互いを尊敬し慕っている。 師弟関係を超えた本物の関係ーーー そんな二人が、互いを危険に巻き込みかねない秘密を 明かすことはないのだろう。 俺だけは、俺が忍であることを二人ともが認識している、 ということが公になった訳だけど… 「…もっと俺も頑張らないとな」 対馬は少し悔しそうに呟いた。 「何か言ったか?」 芭蕉が振り向くと、対馬ははっとして首を振った。 「何も!ーーーそれより芭蕉さん、次はどこを旅するんだ?」 「そうだな…越後から海沿いに越中、金沢、福井などを巡って行きたいと思っている。 知り合いも多くいることだしな」 「芭蕉さん!僕、その辺りの土地にまつわる物語を沢山知っているんですよ!」 すると、曾良がきらきらと目を輝かせて言った。 「物語?」 「へえ、それは楽しみだな」 芭蕉と対馬は思わず、 まるでそれを一番の楽しみにしているかのような、 待っていたとばかりの笑みをこぼした。 「よし!ならば旅を急ぎましょう!」 曾良はご機嫌な様子で二人の前を走り抜けて行った。 「!おい、曾良待ちなさい」 「まったく、曾良は餓鬼だよなあ」 芭蕉と対馬は顔を見合わせ、くすりと微笑むと 曾良の後を追って駆けだした。 終
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