八百屋お七

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ーーー二人で協力して洗濯を終えた時、 既に陽は傾き始めていた。 「ありがとう。 一人でやっていたら、今頃とっぷりと陽が沈んでいた頃よ」 「感謝しろよ」 庄之助が素っ気なく返す傍ら、お七はふと空を見上げた。 「綺麗…」 「何が?夕日?」 「ええ。まるで火のように真っ赤な空… 吸い込まれそうなほど、綺麗」 「…ほんとに好きなんだね、火」 庄之助は洗濯物を干しながらため息をついた。 「俺は火が怖いね。 下手したら死んでしまうんだから」 「でも、火は使い方次第ではとても便利なものよ」 「…お前は何も知らないからそんな呑気なことを言えるんだ」 「どういうこと?」 お七が眉をひそめると、庄之助はじっと町の方へ目を向けた。 「まだ、はっきりとはしていないけど… この大火で既に3000人余りの遺体が見つかったそうだ。 皆、炎に焼かれて真っ黒焦げになっていたとよ」 庄之助は日中、住職と共に町で逃げ遅れた者達の誘導や 遺体の処理を手伝っていたのだという。 そこで目にした火事の後の惨状を、生々しいほどに語って聞かせた。
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