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◇
「金木。」
「は、はい!鎌田さん!」
「ほら、資料。」
「ああありがとうございます」
「お前、何回『あ』言えば気が済むんだよ…。」
「ひっ!すみません!」
パサリと頭の上に置かれた資料に手を置いたら、耳にその唇が近づいた。
「…今夜、空けとけ。」
うわわわ~!
頭の上から蒸気が、ぼん!と音を立てて噴火したのではないかと言う位、身体が熱くなる。
だ、大丈夫…かな。
わ、私…ちゃんと歩けて…
「ねっきー、どうしたの?左足と左手、一緒に出てるよ。」
「あ…渋谷さん。」
鎌田さんと同期の渋谷さんに声をかけられて我に返り、慌てて顔をOLスマイルに戻した。
いけない。
鎌田さんに接近されて浮かれてたってバレる所だった。
「いきなりホッとして冷静にもどんなや、わかりやすすぎるわ。」
え?!バレて…?!
含み笑いをする渋谷さんに向かって目を見開いた途端に落とした資料。
「テメ!何やってんだ!」
すかさず鎌田さんが再登場した。
「ったく、俺が折角徹夜で完成した資料…。」
「すすすす、すみません!」
ああ…何をやってるの、私。
急いでかき集めていたら、一緒に拾う為に隣にしゃがみ込んだ鎌田さんがポツリと呟いた。
「…恭介に見蕩れてんじゃねーよ。」
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