3人が本棚に入れています
本棚に追加
今から会いに行こうとしている彼女とは、恋人でも友達という間柄でもない。
ただの偶然が重なった、顔見知り。
俺が通ってる大学の近くにある本屋で彼女は働いていて、大体決まった曜日と時間にその本屋に立ち寄る俺は、その時間にレジを担当する彼女の接客を受けていた。
それが数回重なれば、自然とお互い顔を覚えるわけで。
気の利く彼女は、俺がよく買う作家の新刊が出る日を、レジの合間に知らせてくれた。
それをきっかけに、レジの合間に軽く一言、二言、話すだけの仲になった。
そんな、ささやかすぎるひと時が、いつの頃だか心地よくなった。
名前を聞いたり、連絡先聞いたりして、もっと仲良くなろうとすれば良かったのかもしれないけれど……俺としては、このささやかな時間だけで、十分満足してたんだ。
けれど、そんな日は長く続かなくて……。
1週間前。
風邪引いて体調を崩した俺は、3日間家で引きこもる事になってしまった。
回復した後、いつも通り本屋へ立ち寄ったけれど……レジに彼女の姿はなかった。
気にはなったけど、名前も知らないし、たまたま今日はこの時間じゃないのかもしれないと思うと、別の店員に聞く事も出来なかった。
最初のコメントを投稿しよう!