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名前すら知らなければ、連絡先も知らない為、当然の事だけど……彼女とはそれきりだ。
あの日、途中まで連れて来てくれた彼女の友達に、お礼を兼ねて報告したかったけど、別れた場所に引き返した所で、友達の姿はなかった。
お礼と……入場料、渡したかったんだけどな。
少しだけそんな後悔も残しつつ、名前も知らない彼女を、あんな形で見送ってしまってから……3年が経った。
当時大学生だった俺は、無事に就職して社会人となった。
半年の研修期間がようやく終わって、明日から配属となる所だ。
とりあえず、無事に研修が終わった事だし、自分を労う為に、途中のスーパーでお酒とつまみでも買って帰ろう。
そう思いながら、信号を待ちをしていた。
ここの信号に捕まると長くて……朝の急いでる時にぶつかると、やるせない気持ちになる。
けど、今は帰りだし、解放感から少しだけ浮ついた気持ちになってる事もあって、多少待たされても苦にはならない。
目の前を通過する車を数台見送ったら、暫く通過する車がなくて、向こう側で待ってる人の姿が見える。
何気なく見たら、俺の視線はそこに張り付いたまま……逸らす事が出来なくなった。
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