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一度、好きな人はいないのかと尋ねてみたら、
「いるけどね。でもこれは秘密だから」
って意味深に笑われた。
……もしかして、私?
そんな思い上がった考えがあたまを掠める。
……まさか、ね。
いまだに左手薬指にはまった指環を眺めながら、なぜか胸がずきんと痛んでた。
「……なか……おれ……しん、ぱ……」
「うん。大丈夫、だから」
意識が朦朧となっているシュウが、一生懸命呟く言葉に耳を傾ける。
ふたりともいい歳になり、そのうち、私より早くシュウにお迎えがきた。
「……ユ、カ……」
「大丈夫、大丈夫だから」
精一杯、笑顔を作って手を握ると、シュウは満足げに笑って瞼を閉じ……そのまま息を引き取った。
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