第2章 地下格闘家Sさん

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Sさんは、マッサージ店がオープンしてからずっと来てくれているお客様だった。 最初は、ヤカラっぽく来店したから、私や同僚も「ん?」って思ったけれど、意外と、と言ったら失礼だけど、礼儀正しく、私たちの間でも好意的に思っていた。 私自身も、何度かSさんを施術していた。 その中で、Sさんがキックボクシングをしているという話から、私も元ボクサーという事で話をするようになった。 Sさんは、ストリートファイトは幾度となく経験しているけれど、地下格闘技のイベントに出場するのは初めてだった。 私はつたないながらも、プロで12戦、ボクシングの聖地後楽園ホールを主戦場に戦ってきた経験から、少しアドバイスさせてもらったりした。 そんな私の話でも、興味深そうに聞いてくれるSさんに、私も好感をもっていた。 そんな中、試合の3週間ほど前、Sさんが来店した。 すると、様子がおかしい。
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