第2章 地下格闘家Sさん

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皆、裸足で練習するようだった。 けれど、私はリングシューズでないと本来の動きができないと思い、イキっていると思われるかもしれないけれど、リングシューズを履いた。 しかし、下の床との相性が悪いのかツルツル滑った。 なので、またリングシューズを脱ぎ、結局、裸足になった。 回りの人は、きっと「どないやねん!」と、突っ込んだことだろう。 「エレジーさん、パンツでイイですよ。」 リングシューズを脱いで、裸足で動いたら、トレパンの裾が長くて、動きにくそうにしていた私に、Sさんが言ってくれた。 少し抵抗があったけれど、結局、パンツ一丁になった。 そして、ミット打ちが始まった。 「次、エレジーさん行ってください。」 ミット打ちが終わったSさんが言った。 多分、皆、元プロボクサーの私がどんな動きをするのか注目していただろう。 こうやって、拳を握って動くのは何年振りだろうか? 何年前かさえわからないくらい久し振りだった。 最初は、ミットを持つトレーナーの指示通りに打ち込めていた。 「やっぱり速いな。」 回りの人間の声が耳に入る。 しかし、しばらくすると、トレーナーの指示からワンテンポ遅れてじゃないと反応できなくなった。 早々とガス欠になってしまった。 (ああ・・・また、この場所に戻ってきたか・・・) 昔の苦しかった、あの頃の記憶が甦る。
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